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2010年3月26日 (金)

退職従業員による競業―最判平成22・3・25

[判旨]破棄自判
「Y1は,退職のあいさつの際などに本件取引先の一部に対して独立後の受注希望を伝える程度のことはしているものの,本件取引先の営業担当であったことに基づく人的関係等を利用することを超えて,Xの営業秘密に係る情報を用いたり,Xの信用をおとしめたりするなどの不当な方法で営業活動を行ったことは認められない。また,本件取引先のうち3社との取引は退職から5か月ほど経過した後に始まったものであるし,退職直後から取引が始まったAについては,前記のとおりXが営業に消極的な面もあったものであり,Xと本件取引先との自由な取引が本件競業行為によって阻害されたという事情はうかがわれず,Y1らにおいて,Y1らの退職直後にXの営業が弱体化した状況を殊更利用したともいい難い。さらに,代表取締役就任等の登記手続の時期が遅くなったことをもって,隠ぺい工作ということは困難であるばかりでなく,退職者は競業行為を行うことについて元の勤務先に開示する義務を当然に負うものではないから,Y1らが本件競業行為をX側に告げなかったからといって,本件競業行為を違法と評価すべき事由ということはできない。Y1らが,他に不正な手段を講じたとまで評価し得るような事情があるともうかがわれない。
 以上の諸事情を総合すれば,本件競業行為は,社会通念上自由競争の範囲を逸脱した違法なものということはできず,Xに対する不法行為に当たらないというべきである。なお,前記事実関係等の下では,Y1らに信義則上の競業避止義務違反があるともいえない。」

 退職した従業員との間に何らかの競業避止契約が締結されていたというわけではないので、不法行為に基づく請求がなされた事案であるが、先例としての意義はあると思われる。もちろん、契約が締結されていた場合であっても、その契約が有効であるとつねに解されるわけではないことにつき、たとえば、東京地判平成7・10・16判時1556号83頁(監査役であった者との間で締結された退職後の競業避止義務を定める特約につき、職務との関係で競業を禁止することの合理的理由の疎明がなく、競業禁止の場所的制限がないなど、目的達成のためにとられている競業行為禁止の内容が必要最小限とはいえず、競業禁止による不利益に対する代償措置も十分とはいえないから、公序良俗に反して無効であるとした)参照。

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